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概要 マップ エラー・ボス情報小型エラー「α型エラー400」「β型エラー401」初級 上級 中型エラー「γ型エラー500」「δ型エラー501」初級 上級 オータムミラージュ初級 上級 バニーミラージュ初級 上級 サイフォスリペイントVer./剣崎(レイドボス)初級 上級 エンディング(?) 報酬参加ご褒美 アップデート履歴 コメント 概要 シーズン2到来!! シーズン2へのアップデートを楽しみにしているマイ神姫 しかしなかなかアップデートが来ない! またもやエラー予感!?アップデートの為殲滅せよ!! 期間限定(2023.2.16 10 00~2023.4.105.8 10 00)イベント。従前通り、エラーが敵となる。 今回はサイフォスに焦点が当てられており、オフラインでのスタンプつきストーリーに登場するNPC神姫には通常型(個体名:「神姫NET管理局ネットワーク課/ネットワーク担当」鎧原)および一部バトルのみ種村ジュビ子が登場。不足人数時に登場するのは前者となる。 そして、レイドボスには嘗て「バトルロンド」時代に登場したリペイントVer.の姿をした個体(個体名:謎の騎士型神姫→剣崎)が登場する。 今回からwave1~2の雑魚エラー配置が更に多様化。赤青どちらかしか出てこない時もあり、武器相性によっては簡単にあしらえたり、そうでなかったりする。 臨機応変な武器の切り替えを心掛けていきたいところ。 前回と同様、討伐タイムランキングはオフラインのみ開催となっている。 なお、特定の装備にエラーへの補正値(ダメージボーナスまたは耐性)がある様子。 今回は公開されなかったため、やむなく掲載自体を見送る。 マップ 第七回と同様、レイドボスバトル恒例の場所(神殿)。 時間帯は明るい昼間。 エラー・ボス情報 小型エラー「α型エラー400」「β型エラー401」 WAVE1およびWAVE3に出現。 初級 ス 体 500? ? 攻撃名 功 射程 弾速 備考 近接攻撃 ? 0.1? 遠距離攻撃 ? 0.25? 80? 三連射する 上級 ス 体 500? 5000? 攻撃名 功 射程 弾速 備考 近接攻撃 300? 0.1? 遠距離攻撃 100? 0.25? 80? 三連射する 中型エラー「γ型エラー500」「δ型エラー501」 WAVE2とWAVE3に出現。また、稀にWAVE1にも出現する。 初級 ス 体 500? ? 攻撃名 功 射程 弾速 備考 近接攻撃 ? 0.07? 零神のMVソードに類似。WAVE3にも出現 レーザー ? 0.25? 80? 貫通属性。WAVE2と3で出現 上級 ス 体 500? 7500? 攻撃名 功 射程 弾速 備考 近接攻撃 500? 0.07? 零神のMVソードに類似。WAVE3にも出現 レーザー 500? 0.25? 80? 貫通属性。WAVE2と3で出現 オータムミラージュ WAVE3に出現するレイドボス。基本的には第七回に登場した時と同様で、凶悪なドロップテーブルも相変わらず。 ただ、今回オンライン上級/スタンプ終了後のオフライン上級には登場しないので、従前に装備を掘れなかったマスターはオフライン初級でスタンプリセットを掛けながら戦い続けていれば、もしかしたら何とかなるかもしれない。 しかし、2023/04/10のアプデ以降出現しなくなった。 初級 総合体力 75000~100000? 攻撃名 功 射程 弾速 備考 キャンドルロッド(槍) 赤オーラ時使用 キャンドルロッド(片手ライトガン) 青オーラ時使用。密着していれば当たらない 食欲の秋 アクティブスキル自身のLPを回復し攻撃力を上げる 上級 総合体力 75000~100000? 攻撃名 功 射程 弾速 備考 バニーミラージュ 一定確率でWAVE3に出現。バニー服を纏って金色のミラージュ武装を背負い、トレーを構えた姿。 嘗てのナイトミラージュと同様、此方の一部デバフ系アクティブスキルを反射してくるので、こいつが出てきたらデバフ系アクティブスキルを使わないようにしたい。 特に「全員攻撃スピードダウン」は、後述の理由で悪手となるので絶対に使わないこと。 スキルはプレイヤー側全員の攻撃スピードを下げる「バニーリフレクション」。此方の「全員攻撃スピードダウン」を反射された後に使われでもしたら、それこそ目も当てられない事になる。というか、どこがどう「リフレクション」なんだか全く意味不明。 つまり、此方の装備するアクティブスキルの最適解は… 「防御力ダウン」「死出の旅路(要:死神の鎌)」 基本的に硬いレイドボスに対して効果的にダメージを通す上で欠かせない。 特に後者については、もはや言うまでもないド安定。数多のナーフを経てなお確実な一手である。 「攻撃スピードアップ」「ゴールデンエンジェル(要:ゴールデン装備)」「デスナイト(要:バルムンク[夜])」 基本的には使われた直後に、相殺する形で使う。 ただし此方の方が有効時間が短くなっている上、攻撃力の低い神姫では与ダメージが雀の涙な上ボスにスキルゲージを稼がれる等ひたすら苦行になってしまうので、使う時にはタイミングを考えるよう心掛けたい。 「攻撃力アップ」「花より団子(要:三色団子)」 どうせ攻撃スピードを減らされるのなら、その分一撃をより重くすればいいじゃない!というコンセプト。 アプローチ的には防御力ダウン系の方がより確実ではあるが、他プレイヤーが防御力ダウン系を掛けた後、合わせ技となった場合の爆発力はなかなか侮れない。 これをセットするなら、攻撃力のより高い神姫を選んでおきたいところだ。 初級 総合体力 75000~100000? 攻撃名 功 射程 弾速 備考 バニーリフレクション アクティブスキル敵全員の攻撃スピードを下げる バニーリフレクション(裏?) アクティブスキル同名の別スキルが存在している様子。自分と攻撃スピード低下が掛かっていないプレイヤーの攻撃スピードを下げる。かつ自分の体力を約2割回復する。発動条件は不明。バニーリフレクションの効果中にスキル使用が条件? 上級 総合体力 75000~100000? 攻撃名 功 射程 弾速 備考 サイフォスリペイントVer./剣崎(レイドボス) 一定確率でWAVE3に出現。サイフォスのリペイントタイプ。 攻撃力が非常に高い上スタン武器に対する耐性が高いため、どうしてもスタンを織り交ぜたい時はスキルで使うのがベター(ガードされる可能性もあるが)。 死神の鎌/防御力ダウンは相変わらず有効で、攻撃スピードダウンも刺さる(が、バニーミラージュ対策で外している人も多いかもしれない)。 アクティブスキル「サクレクール(闇)」はオリジナルと同じく突進技。どの方向に突進するかは発動前に浮き上がってくるくる回るのである程度分かるようになっているが、発動した際には「その周囲にも攻撃判定が発生」する。 この攻撃判定範囲の広さは正直オリジナルに比べて「最早インチキ臭い」というレベルで、充分に距離を取ったつもりでも喰らってしまっている事がある。 LPに余裕があればバーストでの回避、あるいは一定時間の無敵判定が発生するアクティブスキルを持っているならばそれを発動しての相殺を狙いたい所だが、どちらも難しい状況であるならば素直にガードしよう(ただし、ガードの上からでも削り倒される事もある)。 初級 総合体力 75000~100000? 攻撃名 功 射程 弾速 備考 デファンス(槍斬撃武器) 赤オーラ時使用 ベック(片手ライトガン) 青オーラ時使用。スタン値が高いので注意 サクレクール(闇) アクティブスキル剣を構えてからの突進攻撃。元のもの(サクレクール)より移動距離が長い換装を兼ねているせいかベック、デファンスで殴る。そのためか攻撃範囲が広くなっている 上級 総合体力 75000~100000? 攻撃名 功 射程 弾速 備考 + オフラインでの出現順は… オフラインでの出現順は、オータムミラージュ×2→バニーミラージュ→オータムミラージュ☆→剣崎→バニーミラージュ→オータムミラージュ→剣崎☆→バニーミラージュ→剣崎。 なお、☆のバトルではNPCが種村ジュビ子となる。 エンディング(?) + 「そうだ…バトコンやろう!」 悪神姫と化した剣崎さんは捕えられ、 神姫NET管理局に引き渡された。 剣崎さんが悪神姫になってしまったのは、 過去の闇神姫事件のせいなのか、 上司のせいなのかは誰にもわからない…。 ともかくこれで、いよいよバトコンシーズン2が開始されるだろう。 新神姫の追加も楽しみだが、願わくはエラーがなくなり、 動作もより軽くなればよい…と思う(プレイヤー名)であった。 シーズン2の未来のために、今何ができるのか 「そうだ…バトコンやろう!…そしてダンスでも眺めよう。」 オフラインレイドバトルでスタンプを集め切った時に流される、エンディングめいたムービー(※終わりません!これからもバトコンをよろしくね!) 各バトルモードでの戦績に加えて、これまでの使用神姫や武装などプレー記録が表示されて行く。 + 平行して表示される画像は… 平行して表示される画像は、「鎧原との出会い」→「バニーミラージュ」→「剣崎(ボス)」→「参戦神姫(1人ずつ。背景はピンク/黄/水色の順)」→「参戦神姫3人の並び」→「剣崎と鎧原」。 今回も、オフラインの進展をリセットする事ができる。 報酬 参加ご褒美 オンライン及び店内バトルの参加報酬として、初級は【Rネジ】×10個、上級は【Rネジ】×15個を獲得できる(オフラインでは各-5個) また今回から、入手できるコンテナは20+レイドボス武装1個に固定された。剣崎はもとよりミラージュ達からドロップする武装も相変わらず多彩なため、全部集めるのはやはり苦行となる。 更に、今回からは小エラー中エラーを撃破する事で、一定の確率でご褒美(ヂェリカン)が貰えるようになった。これはwave1~3までの雑魚撃破数と運次第。そう、wave3の雑魚掃討にもご褒美が出るようになったのだ。 なお貰える上限はなく、レアリティもN・R・SR・URでまちまち。 アップデート履歴 日時:2023.4.10 内容:2023.5.8 10 00までに延長。これに伴いオータムミラージュが出現しなくなった 日時:2023.2.16 内容:期間限定イベントとして実装 コメント 名前 コメント
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第三話:篭城姫 アキラとの会話が終わって、健吾を含めた三人で神姫センターへと移動すると、そこには先ほどとは変わらない空気の場所の中から入り口にいる俺を待ち構えている視線を感じる事ができた。それの先を見るとわかってはいたが、それぞれの神姫の準備を終えて、俺との対戦を待つ真那とセツナの姿があった。 戦おうとしている真那の気合に驚きながらも彼女達に足を向けて近づく。改めて見ても、その目は本気だった。 「ようやく来たのね。準備を済ませても来ないから逃げたのかと思っていたわ」 「俺は飯を食うのが遅い。そんだけだ」 「俺も店長に休憩時間をもらって、ちとこいつと打ち合わせもしたからな」 「そう。まぁ、いいわ。今回は私が勝ってみせる。二対二でね」 「その予定より、かなりズレてるけどね。勝ってもこの人に勝った事になるのかさっぱりね」 「う、うるさいわね。賭けなのは変わらないのよっ!」 呆れた様子のセツナの指摘にかっこつけていた真那の目と空気が崩れた。本気でもこの調子なのは変わらないらしい。 「違いないな。勝負は勝負だ」 「ええ。勝ったらあんたと首輪狩り」 「負けたら、そのままだ」 「じゃ、早速始めましょう。今回の私は一味も二味も違うわよ」 「そうか。楽しみにしているぜ」 短い会話が終わると、真那とセツナは取っておいたシミュレータの席に着いた。俺とアキラもそれに倣って、反対側の席に座った。 「さて、お前さんの彼女の目を覚まさせてやるか」 アキラはメリーをシミュレータのポッドにセットしながら俺にとんでもない事をのたまう。 「な!? 何を言うんですか……」 それに動揺しながら俺も紫貴をポッドにセットする。今回は応用性があり、パワーのあるメリーが相方だ。それなら、武装の性質と機動力の高さを考えて、彼女の方が適している。さらに忍者刀「桜花」も用意した。これとエアロヴァジュラで使い分ける事にする。 「どう考えたってそういう風にしか見えん。セツナって子も感づいているぜ。彼氏といちゃつくのに協力させられている事に呆れてる感じさ」 「はぁ……そうですか……」 セットが完了すると、システムが起動し、相手の簡易データが表示される。真那はいつものようにルナだ。セツナはハウリンコアと紅緒素体を組み合わせたハイブリッドタイプで海神ⅡY.E.N.Nという名前らしい。長すぎるのでエンと呼ぶ事にする。今回はデッキが非表示の設定になっている。どうやら、こちらの情報を見れないリスクを冒してでも、武装を見せたくないらしい。 ひとまず、軽くデータを見て、蒼貴とメリーをフィールドに転送した。今回は塔という最近、追加されたフィールドが設定されていた。『ハイスピードバニー』のティアが塔の騎士を倒した対戦が有名だったのを思い出す。あの時は陸戦型の神姫同士の試合だったが、今回はルナという純粋な空戦型がいる。どうにかして同じステージに引きずり込まなくては危険だ。 『Ready……Fight!!』 相手の装備がわからず、戦術をその場で立てないとならないが仕方がない。今は相手の装備から把握しよう。そう思った瞬間だった。いきなりミサイルが俺たちに降り注いできた紫貴とメリーはそれぞれアサルトカービンとポルポロン=ビブラーターで迎撃する。撃ち落としてどうにかしのぐが、今度は黒い翼を羽ばたかせながら、空から紅緒タイプの鎧を纏ったエンが太刀を担いで襲い掛かってくる。さらにその後ろからマシンガンによる援護射撃も降り注いでくる。 「アキラさん、エンの迎撃をよろしく! 紫貴! サブアームで防御しつつ、ルナを牽制しろ!」 「まかせろ! メリー!!」 「OK!!」 「お任せください!!」 俺達が命令を飛ばすと、それぞれの神姫がそれに呼応し、紫貴が牽制、メリーが接近しているエンの相手をする。その行動に反応してルナが回避の上でレーザーを放つ。紫貴は間一髪で避けて、ルナをようやく視認した。 「アーンヴァルMk.2装備か……!!」 紫貴を通して見たその装備はとんでもないものになっていた。アーンヴァルMk.2装備をベースにアーンヴァルとエウクランテの装甲、ブースターを追加し、まるで重爆撃機の様相を呈している。先ほどのミサイルはウェルクストラのミサイルの様だが、それは先ほどの挨拶で全て使い切っているらしい。 「そうよ。あんたを倒すために全て用意したのよ。場も、武装も、対策も!」 「そりゃ、ご苦労なこった。こっちもこれから立てるさ」 「その軽口もこれまでよ! ルナ!」 「今日こそミコちゃんに勝っちゃうよ! 紫貴! 覚悟~!」 今度はエウロス、ボレアス、ゼピュロスを合体させたテンペストをぶっ放してきた。エンはそれに反応して空へ舞い上がり、紫貴とメリーに極太のビームが向かう。 「うわわっ!?」 「くっ!!」 二人はかろうじて避け切ったが、その回避する前の場所には大きな穴が開いていた。直撃なら一撃死、かすっても深手を負う羽目になっていただろう。 「オーナー! あいつ、無茶苦茶よ!」 まったくもって紫貴の言う通りだった。しかし、真那の言葉の通り、塔という空戦機に圧倒的に有利なフィールド、護衛として素早い格闘型のエン、そもそも武装奪取、破壊をさせず、射程圏外からのチャージの安全も確保した長距離砲撃とその無茶を可能とする条件を揃えてきている。このままでは一方的で埒が明かないだろう。 「おい! この塔、入れるようだ! そこに逃げ込もう!」 「賛成です。その場しのぎぐらいにはなる」 アキラの言葉に従い、紫貴とメリーにピサの斜塔の様な形の塔に入るように命令した。塔の壁が何とか盾になるだろうが、ルナがあの装備だ。壁をぶち抜くなど容易な事だろう。すぐに手を打たねばならない。 紫貴とメリーは俺たちの指示を受けて、銃火器で牽制しながら塔の中に撤退する。それを見るとルナはテンペストによる砲撃を止め、チャージが早い方であるGEモデルLC5レーザーライフルに切り替えて、それで壁を破壊し始めた。塔の中の二人は砲撃を察したらしく、すぐに上へと移動し始める。 「炙り出し~炙り出し~楽しいなっと!」 情け容赦ないルナの砲撃が続く。エンも黒い翼に秘められたスキル『ダークスラッシャー』を砲撃で空いた穴に放り込んで、紫貴とメリーを追撃する。中はかなり大きな螺旋階段に配置されており、フル装備のイーダでも問題なく上れそうだ。さらに甲冑や柱などオブジェクトが多く、使える遮蔽物があった。 「こいつは厄介だな。塔の中にいる分、やり方は制限できるがどうするか……」 「手はあります」 「何?」 「シベール・デンジライフルを用意してください」 「なるほど。その手か。OK。メリー、そいつを頼む」 「はいっ」 「紫貴はそのままエクステンドモードで援護射撃だ。デンジライフル程じゃないが、遠距離のルナを牽制できる。エン共々、弾をたっぷり振舞ってやれ」 「お任せよ!」 俺の単語から作戦を理解したアキラが指示すると同時に行動を始める。紫貴はアサルトカービン・エクステンド、メリーはシベール・デンジライフルを用意する。完了した直後にアークブラストが塔の外壁を貫通してきた。二人はあわてて伏せるとビームが頭上を通り過ぎていった。さらにその穴からエンが黒い翼を羽ばたかせてダークスラッシャーを放とうとする。さすがにそこまでは許さず、紫貴がアサルトカービン・エクステンドで反撃をして、放たれる前に塔の穴から離れさせる。 その後も紫貴は連射を続ける。ルナを牽制するためだ。当然、距離的に当たる様な状況ではないものの、かすりでもすれば御の字だ。ルナは紫貴の武器の距離を知っているためか、撃ち続けている事に驚いている様子でさらにルナの腰をかすった。 「痛っ……!? かすった!?」 「今だ!」 「はい!」 幸運にもかすりによって生じたルナの硬直にアキラが反応し、メリーに指示を飛ばした。彼女はシベール・デンジライフルでアーンヴァル用の追加ブースターを撃ち抜いた。 「ビンゴ!!」 「な!? ルナ! ブースターパージ!!」 まさか、狙撃されるとは思わなかったのか、真那は慌てて、ルナに機体バランスを考えたのか無事な方のブースターも一緒にパージさせた。脱落したブースターは二基とも爆発し、ルナはすぐに離れようとしたが、ブースターの破片によって、体の至る所に傷を付けられることになった。 「エン! 援護を!!」 「了解!」 ダークスラッシャーを出し損ねていたエンが穴の中からそれを放ち、さらにルナが破壊した大穴から塔の内部に入り込んできて、紫貴とルナを強襲してきた。 「来たな! 紫貴、桜花を使え! 室内戦ならこちらの方が有効だ!」 「蒼貴! 力を借りるわよ!」 紫貴は転送されてきた蒼貴の忍者刀「桜花」を握るとアサルトカービンで牽制しつつ、太刀の一閃を避ける。さらにその隙にメリーが体当たりして足を止め、次なるエンの反撃に備えてチュロス=フォークを振り回して、回避を強要する。 「はっ!!」 紫貴は忍者刀で回避しきっていて足が止まっているエンの翼を切り裂こうとする。エンは辛うじてそれを回り込むことで回避したものの十分な準備を整える事ができず、体勢を崩される。 「隙あり!」 メリーは隙を見て、まだ持っているシベール・デンジライフルを放とうとした。その瞬間、アルヴォPDW11が大穴からばら撒かれる。紫貴はサブアームでメリーと自身へのその攻撃を防ぎ、アサルトカービンで返す。ルナに向けて放つが、彼女はさっさと大穴から逃げて、それから逃れる。 それを見るとは即座にターゲットをエンに切り替えて連射を続ける。狙われたエンも、それに付き合わず、大穴からその場を去った。 さらにルナが大穴にアルヴォPDW11をばら撒いてくる。紫貴がアサルトカービンで牽制しながら上階へとメリーと共に退却する。幸いにも外壁が破壊されておらず、体勢を立て直されるだろうが、こっちも次の手を考えられる。 「まずは空中待機用のを破壊したってとこか」 アキラの言う通り、ルナは高度を保てそうな塔の頂上やら大砲や旗といった塔から突き出ている足場を定期的に動き回りながら、高度を維持する動きに変わった。どうやら何でもいいから破壊すれば、何かしら弱まっていくと見ていいだろう。飛ぶのにあれだけの武装を積んでいるなら、無理をしていない訳もなかったという事だ。これなら、紫貴のアサルトカービンで当てられるぐらいの距離は詰められる。 「そういう事ですね。Mk.2装備なら、通常飛行であれば問題はないでしょうが、敵は武装をパージしない所を見ると、建物を破壊することを重要視していると見て良いでしょう」 「ま、でねぇと窓の中からぶち込むぐらいしかないからな。次はどうする?」 「今度は翼を奪います。それでやっと、僕達は戦えるってとこです」 「だな。いい加減、近接戦にしたいとこだ。バックユニットの破壊に移ろう」 「了解です。頂上へ上りましょう」 「マジか?」 「ええ。少々無茶をします」 「いいぜ。乗ってやる。聞いたか。頂上を目指せ」 「はい!」 「紫貴も続け。その間にできる限り、奴らにダメージを与えるんだ」 「ええ!」 紫貴とメリーはそれぞれの攻撃手段で反撃をしつつ、頂上を目指し始めた。相手はやはりというべきか、虎の子のLC5レーザーライフル、テンペスト、アークブラストをリロードが終わり次第、代わる代わる撃ち込んで、塔の外壁を破壊していく。しかも、こちらの位置を完全に把握しての砲撃だ。ルナと真那の分析力が高まっている証拠だ。さらにエンも穴から強襲を仕掛けてくる。かなり息の合ったコンビであり、状況は悪い。 だが、足がかりはできている。飛行能力を制限できるだけでいい。可能性を引き出せるはずだ。 「頂上に上るようね。打って出る気という事か」 「ええ。こっちは空中待機できなくて、距離をつめてきたからそうしてきたんでしょう。でもまだまだ距離をとれば行けるはず」 戦いの中、真那達を見る。あちらもあちらで予定よりも押したのが効いたのか、あれこれ話し合いながら、戦術を変えようとしているらしい。しかし、こちらの意図を読んでいる訳ではないらしい。これならそのまま行けるだろう。 見解を固めた時、紫貴とメリーは塔の頂上に出た。円状の地形に王冠の様に配置された手すりがあるだけの広間のようなものとなっていた。その上空にはルナとエンが見下ろしている。先ほどのやり取りでそこまでは読んでいたらしい。 早速、ルナがアルヴォPDW11を地上掃射して、紫貴達の足を止めるとその背後から太刀でなぎ払いを仕掛けてきた。その攻撃を紫貴はエアロヴァジュラを使って防御し、地上掃射から動けるようになったメリーがエンにフラン=スプーンを叩きつける。その速やかな反応にエンは避けきれず、翼で防御し、それによって右の翼が変な方向に折れ曲がった。 「くっ……!!」 エンはすぐにエアロヴァジュラで防御する紫貴を蹴り飛ばして、ルナの援護射撃の中、距離をとるとダークスラッシャーを放とうとする。 「その動作は見切ってます!」 メリーは予想していたのか、頂上に上る際に紫貴から借りたアサルトカービンを連射した。メリーにアサルトカービンがわたっていた事を予想していなかったのか、エンは対応を遅れ、硬直を起こした。さらに間髪入れず、紫貴がその距離を詰めてエアロヴァジュラで横一閃を仕掛けた。 「しまった!?」 「でぃやぁっ!!!」 エンは咄嗟に防御をするが、紫貴のパワーは強く、斬撃は防げたものの、塔の頂上から吹き飛ばされた。翼の傷ついているエンはそのまま落下していき、紫貴達の視界から消えた。 「エン!? セツナ! 彼女は大丈夫なの!?」 「翼は動くから何とか地面に落ちるのは避けられるけど、戻るには時間がかかりそう。ちょっと時間を稼いで」 「OK! ルナ! テンペストで焼き払え!」 「ラジャー!」 落下で叩き潰せるかと思ったが、そうはいかないらしい。だが、待ちに待った2対1の状況だ。ここでルナにどれだけダメージを与えられるかで今後が決まる。正念場だ。その前にテンペストが照射され、極太のビームが紫貴とメリーめがけて襲い掛かってきた。 「散開しろ!」 二人は左右に回避して、テンペストの一撃から逃れる。メリーはアサルトカービンを連射して、ルナを叩き落としにかかる。 ルナはテンペストと外装を捨てた。機動力を高めて可能な限り避け、アルヴォPDW11と温存していたらしいリリアーヌを展開して、連射させた。 それに対して、サブアームでアルヴォPDW11を防御して、高威力であるリリアーヌのレーザーは避けた。そこを紫貴がボルボロン=ビブラーターで攻撃する。しかし、それもまたかわされた。さすがアーンヴァルMk.2装備。重武装をパージすれば、小回りでこちらを翻弄してくる。 「紫貴、武器を返して、デンジライフルを用意してもらえ。また撃ち抜いて、機動力を落とすんだ」 指示により、紫貴とメリーは互いの武器を返して、それぞれの役割を変更する。メリーはデンジライフルの用意、紫貴はアサルトカービンでの攻撃を仕掛け、ルナとマシンガンの撃ち合いを始めた。 彼女はそれに付き合うこともなく、高威力のレーザー攻撃を厄介と見ているらしいメリーに放った。その攻撃に彼女は左に転がり込んで軌道から逃れ、紫貴がメリーに代わってアサルトカービンの反撃を行う。 「ルナ! アークブラスト! セツナも合わせて!!」 「ええ」 「合わせるだと……!?」 その発言に俺はフィールドを見回す。なんと、破棄したはずのテンペストをエンが回収し、上昇の内にチャージを行っていた。さらにルナも命令どおり、LC5レーザーライフルでアークブラストのチャージを始めた。さらにリリアーヌで牽制射撃をし、相手の足を止めようとする。 「おい! こいつは!?」 「紫貴! メリー!!今すぐ、塔から飛び降りろ! アークブラストとテンペストの挟撃が来るぞ!!」 俺はアキラが言い切らない内に二人に命ずる。ルナとエンのチャージを既に見ていた紫貴とメリーは急いで、塔から飛び降りた。その一秒もたたない内にアークブラストとテンペストが一斉掃射され、塔の頂上は回避の隙間もないぐらいに焼き払われた。飛び降りなければ確実にやられていただろう。 しかし、それでも危険に変わりはない。紫貴は飛び降りてある程度、降りた後でメリーをバックユニットに乗せて、サブアームの爪を立てて、壁に打ち込んで、ズルズルと減速させていく。サブアームクローがイカれるだろうが、背に腹は変えられない。その間にもルナが追撃を仕掛けてくる。メリーは必要に応じて、デンジライフルと備え付けのアサルトカービンで牽制射撃を行って、何とか近づけさせない。 なんとか壁を降り終えた紫貴はトライクモードに変形して、メリーを乗せると彼女に攻撃を任せてそのまま、陸地を走り始める。その疾走をルナとエンが追ってくるが、塔でのダメージが効いているようでそのスピードは紫貴においついていない。 「これなら、まだやれそうだな。アキラさん、攻撃をお願いします」 「わかった。アサルトカービンを借りるぞ」 「ええ」 簡単な打ち合わせを済ませると相手が攻撃を始める。疾走を続ける二人に向かって散開しながらエンがテンペストから取ってきたゼピュロスで、ルナはアルヴォPDW11でそれぞれ追撃をする。まだまだ空の飛べるが故の行動であり、自分達の有利がまだ揺らがない事を証明するかのように上空からの攻撃は容赦がない。 それに対して、メリーは予めアサルトカービンを撃ち、同時にデンジライフルを放つ。弾幕によって動きが制限され、最初の勢いを失っている二人に弾丸が着弾し、飛行能力が失われていく。 「真那、そろそろ飛行を維持するのは難しいわ」 「……そのようね。陸戦に切り換えましょう。相手の間合いに入ってしまうけど、パターンを崩された以上は、やるしかない」 「了解。エン、もう上空にいなくて良いわ。低空飛行でも良いから素早く動きましょう」 「ルナ。バックユニットをシンペタラスモードからコーリペタラスモードに移行よ」 その指示によって、スタイルが変わる。ルナはフライトユニットをダッシュユニットに変形させ、エンも低空での移動に切り換えた。どうやら近接戦を挑もうとしているらしい。蒼貴がいないからなのかはわからんが、これで俺達は戦う手段を増やせる。 「空を飛び回るのをやめたか。俺達の間合いに入って良いのか?」 「蒼貴のいない貴方なんて近接でも十分やれるわ。一人で背負っているだけのあんたならね」 「ほぅ。そんな俺と紫貴なら大丈夫とでも言うか? その油断は高くつくぜ?」 「そっちこそ、近づいたら勝っただなんて思わないでよ?」 「ああ。手加減なんて微塵もねぇさ。こればかりは簡単に譲りたくないんでな」 その言葉の応酬のわからない健吾に、理解して苦笑するアキラとセツナの中、言葉の応酬は白熱する神姫達の戦いもまた、燃え上がっていた。これなら、納得のいく結果を叩き出せる気がしてくる。アキラの言っていた事が確信になってきた。 「だとしても、勝ってやるわよ! この陰険メガネ!!」 「やれるもんならな! このはねっかえり!!」 自分の思いを真那にぶつける。こんなにも簡単な事だった。 戻る -戻る
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「……そんなことが」 「はぁー、そんな神姫もいるんだねぇ。……私が言えた義理じゃないけどさー」 空いた休憩所で今までのことを話し終えた。 シオンもだいぶ落ち着いてきた。 シオンが来てから、最近なんか人に自分の境遇を話してばっかりだな。 別に嫌ではない。身の回りがガラッと変わったようなそんな感じがするだけ。 「そんなわけで、なんとかバトル恐怖症を治したくてここに来たのだけど」 「結局こうなってしまった……」 「う、うん。ごめんね」 霧静さんたちは迷惑じゃないのだろうか。普通に考えたら、自分でもこんな神姫はおかしいと少し思ってしまうわけで、まともにバトルできなかったし。 「大丈夫、気にしてないよ。銃が使えない神姫だけどアリエって今はちょっと強いんだよ。昔はまともに戦えなかったし。……それでいえば、アリエとシオンちゃんは似ているのかもね」 なんだよーそれはー、とアリエは納得がいかなそうな顔をしている。 それで、あの奇妙な大剣を使っているのか。わざわざ銃に似せた剣もアリエの為を思った武装なのかも。 優しい子だな、霧静さんは。 「とりあえずさー、私のこの『エレメンティア』が件のストラーフが使っていたのに似ていたのが問題だったんだからさ。他にもバトルさせてみてもいいんじゃない? 何回かやれば勝てるかもよー」 アリエが意見を言う。 『エレメンティア』というのはその大剣の名前だろう。 ファンタジー色の強い、物語に出てくるような名称だ。 僕としては少しカッコイイと思えてしまった。 しかし、あの大剣の状態が変わった時、イスカのに似ていたってのもあるのだけど、まだバトルをやらせてもいいのだろうか。 大丈夫なのかな? 僕はシオンを見る。 「……まだ、やれます……」 涙を拭いて、僕の目を見てくる。 ただそれがうまく出せないだけで、根性はやっぱりあるんだなと思った。 ―――― 駄目だった。 何人かとバトルを申し込ませてもらってみたけど、戦えていなかった。 犬型や砲台型、イスカと同じような悪魔型とも戦うことはできた。 でも、戦うことはできても全敗だった。 負ける度に泣いてしまうシオン。慰める僕たち。 シオンが気になっているのか――バトルの度に、僕の傍に霧静さんとアリエもいてくれる。 ここで真剣に付き合ってくれる友達が出来たのは嬉しいけど、肝心なバトルは白星を挙げられなかった。 そううまくはいかないか。簡単にできたら、宮本さんにいた頃に治っているはずなんだから。 「う~ん、このまま、やらせても勝てないだろうね。きっと」 「……ちょっと、アリエ。言い方が……」 たしなめようとする霧静さん。 「だって、事実でしょー。銃撃を当てられてもない、撃てたとしても、見当違いの所に当たってる。打撃も本気で打ち込めてないみたいだし。こりゃまじ重症だねー」 アリエの言う通り、相手と戦わせてみても、シオンはダメージを与える攻撃を一切できてない。 勝たせるにはどうしたらいいのだろうか。 いや、勝つまでも、まともに勝負ができるぐらいにならないと、どうしようもない。 ああでもない、こうでもないと、僕たちが思考錯誤している時だった。 「いやー、遅れてごめんな!!……ありゃ?」 「……えっと、この人は?」 「うるさい、おにいさんだねー」 霧静さんたちは僕に訪ねてくる。 場が読めてない淳平だ。 そういえば、淳平が遅れて来るのをすっかり忘れていた。 「マスターがご迷惑をおかけしました……それで、この方々は」 といつも通り胸ポケットにいるミスズが言う。 「うわー、羨ましいなー。こんな可愛い子と仲良くなっちゃって。このこの」 僕を淳平が肘でつついてくる。 「えっ……あの……」と霧静さんは可愛いと言われて恥ずかしそうに顔を赤らめている。 「……淳平、それ以上何も言わない方がいいよ」 「えー、なんでー?」 ミスズが冷徹な瞳で見ているから。 神姫が人間に攻撃できるようなら、絶対危ないだろうな。いつか、目で殺されるかもしれないけど。 「リミちんになんかしたら、許さへんでー!」 アリエがエセ関西弁で凄む。(なんで関西弁?) 「そんなのじゃないって。さっき友達になった霧静 璃美香さんと神姫のアリエだよ。まあ、淳平が来ないから、霧静さんたちと仲良くなったのは事実だけど」 「え、そうなのか」 淳平が来なかったから、霧静さんと話そうとしたわけだしね。 でも、僕は今はシオンのことで頭がいっぱいだよ。 「あなたがシオンね。初めまして、ミスズです」 「……初めまして……」 ミスズが床に降り立って、泣き止んだシオンに挨拶をする。 そういえばどっちも初対面だよな。僕がシオンとの会話のタネにしたことがあるくらいだし。 その本人に会えたんだ。 なんとなく、仲良くなれる気がしたからな、この二人は。 「はーい、私はアリエだよ。よろしくー」 「アリエね。よろしく」 目の前で武装神姫が三人集まった。 友達が増えていくのはいいことだな。 「あれー、どこかで見たと思ったら、キミってO大女子高の生徒でしょ。前にここでバトルしてたの見てたよー。この神姫とかがすっげぇ強かったな。あ、俺は伊野坂 淳平。この子はアーンヴァル型の神姫でミスズだからね!」 「……えっと」 「ほら、霧静さんが困ってるでしょ。やめなって」 少し興奮している淳平が見てられない。 可愛い子が好みらしいから、霧静さんの近くに淳平を寄らせないほうがいいのかも知れない。 あ~、霧静さんは人見知りをするらしいから、こっちは仲良くなれるのか心配だ。 ―――― 「シオンのはなかなか重いみたい」 缶ジュースを買って、三人で飲んでいる。 休憩所のベンチに僕が真ん中で左に霧静さん、右に淳平がいる。人は人同士で、神姫は神姫同士で交流を深めると、なぜかアリエが場を仕切った。 まあ、文句はなかったし、別にそれでいいと思ったからこうなった。 少し向こうにシオンたち三人がいる。 楽しそうに話しているのが見える。 三人寄れば姦しいっていうのかな、あれは。 ……うるさくはしてないけど。 「ふーん、戦えない武装神姫、ね。CSCのせいなのか。螢斗は破棄やリセットは許せないんだろ? だったら、このまま、バトルしないってのは駄目なのか?」 (さっきから、その考えが頭にチラつくけど、それは駄目なんだよな) 「元々、宮本さんの所から家出したのもそれが原因だけど。でも、なんとかしてやりたい。シオンはバトルをしたくない訳ではないみたいだし、嫌がってる様子もない。逆に自分からやろうと思ってる。だけど、身体が拒否する感覚があるって。神姫センターに修理にも出したこともあるらしいけど……なにもなかったってさ」 「……したいのに、できないなんて、変な話」 改めて考えると、人間の精神病みたいだなと思った。 神姫なのに人みたいに反応を起こすなんておかしいよな。 人間の思考に近く、感情があるのも大変なことだと思う。 「まぁまぁまぁ、俺たちも、なんとか協力するからさ。元気出せよ! っな! この後、ミスズともバトルさせてからまた考えてみようぜ」 「……そうだね」 肩を叩いて励ましてくれる淳平。 いけないな、僕が暗くなってた。こういう常時明るい淳平が少し羨ましくなった。 「私も……協力する。シオンちゃんがあんなに泣いて可哀想」 「ありが――」 「あんがとねー! 霧静さん!」 「えっ……その……」 なんで、淳平がお礼を言うんだ。ああ、身を乗り出すから、僕の隣から霧静さんが若干距離を離した気がする。 いまだに淳平に慣れていない霧静さんを助けてから、シオン、ミスズ、アリエを呼び戻すことにしよう。 でも、このままバトルを続けて、なんとかなるのだろうか。 ―――― 「はい、これ、ヂェリカンだよー。私の奢りだからー」 螢斗さんたちと離れて、アリエさんとミスズさんと私。 こんな風に神姫だけで集まるなんて初めてだ。 アリエさんが自分の神姫サイズのバックパックから、色んなヂェリカンを取り出した。ヂェリカンは神姫用の趣向品で、人間と同じような、種類のある飲み物だ。 お酒みたいに酩酊状態になる飲み物から、ジュースのドリンクと色々ある。 私の基本データにはそうあった。 「なんで、アリエはこんなの持ってきているの?」 ミスズさんがアリエさんに対して、疑問に思ってそう言う。 ミスズさんは、マスターの淳平さんや螢斗さんたちには丁寧だけど、神姫同士では気軽に接するみたいだ。 ……でも、私はこういうのは初めてで、いまだに緊張している。 「いやだなー、ミっちゃん。敵であったとしても戦い終わって互いにヂェリカンを一杯飲む。それで私たちはもう友じゃん」 「……一緒にヂェリカンを飲んだら友達ということですか?」 「YES!」 「だからって、このヂェリカンをたくさん持っている理由にはならないのだけど。そもそも、なによこれ。『ゲルリン☆ヂェリー』って」 ミスズさんがそれを手に持つ。 ゼリーでできている人間のような、そんな感じ……いや、そうとしか言えないキャラクターのデフォルメイラストが前面にされている。 「ネタで持ってきたんだー。友達がいたら、飲ませようと思って」 「……ひどくない。それ」 アリエさんが、あははっと笑う。 アリエさんは明るいし友達が多そうだ。 私とは大違いだ。バトルに銃武装が使えないっていうハンデがあるのにすごく強いし。 「ほれ、シーちゃんも、これ」 とアリエさんが一つのヂェリカンを渡してくる。 『イチゴ・オレ ヂェリー』と書かれてある。 「ピンク同士、似合いそうだよー」 「……すいません、頂きます」 手渡されて、蓋を開けてみて飲んでみる。 「あ、おいしい」 「だしょー。それ結構お気に入りなんだ。人間の飲むイチゴ牛乳と似せているんだよ。でも、こっちの方が美味いんだよねー」 甘みがあって、ほんのりとイチゴの味がする。 神姫に合うように、調整されているんだろうな。ヂェリカンは初めて飲んだけど、確かにおいしいと思った。 「神姫ショップにこんなのがあった記憶はないのだけど……」 「あー、こういうのは、リミちんの伯父さんが経営している神姫ショップに売ってるんだ。独自に取り寄せててさー。ちなみに、わたしの武装も伯父さんが作ってくれたんだよー。伯父さん、リミちんに甘いから」 「だからって、こういうの買うのはオーナーの霧静さんなんだから。迷惑かけない方が……」 「大丈夫、大丈夫。ちょびーと、貰っただけ」 「……もしかして、無断?」 「もち!」 「だめでしょ!!……ああ、飲んじゃった、お金払わないと。でも、払えるのはマスターだしなー、ああ、どうしよう」 「……ふふ」 なんとなく、可笑しくて笑ってしまった。 この場がなんとなく楽しく思えた。バトルはうまくできなかったけど、この子たちと友達になれたのは素直に嬉しいと思える。 「この際だ! あんた、これ飲みなさい!」 「うわー! やめてってば! ……うッゴク…………マズッ! ガク」 さっきの「ゲルリン☆ヂェリー」を飲ませているミスズさんと、飲まされているアリエさんとがいつのまにか展開されている。 それで、パタリとアリエさんが倒れてしまった。 あれはそんなに不味いのだろうか。 「それ、ちょっと飲んでみたいんですけど、いいですか?」 「やめておきなさい、死ぬわよ」 「マズマズー」 せっかく持ってきてくれたのだし、もったいない。それにイラストもなんか可愛く思えてきた。 「ッゴク……あ、……私、これ、結構好きです」 ドロッとしてはいるけど、飲めるゼリーみたいな。それでいて柑橘系の味がして、しつこいようで、なんでかあっさりしている不思議な飲み物。 私としては、大好きな部類に入りそう。 「ホ、ホント!? シオンが言うなら……どれどれ……ッゴク…………マズッ!……キュ~」 パタリとミスズさんも直立から倒れてしまった。 あれ? なんで、こんなにおいしいのにみんな倒れるのだろうか。不思議だ。 とにかく、このままにしておけない。 螢斗さんたちに、知らせにいかないと。 ―――― 「あ、螢斗さん。大変です、二人が」 なんでか、ミスズとアリエが倒れていた。 傍らには『ゲルリン☆ヂェリー』と書かれたヂェリカン。それから、なにかドロッとしたのがこぼれ出ている。 何があったんだろうか。これを飲んで倒れだしたよな、二人とも。 うめき声でどちらも寝言のように「マズマズー」と言っていた。本当に何があったんだよ。 シオンに聞いても「……おいしいと思うのですけど」と不思議そうに言う。 「うぉー!! ミスズゥーー!!」 「あっ! これって伯父さんの所の。アリエってば、まったく、もう」 結局、この後二人が強制スリープモードから帰ってこず、バトルもせず、その場はお開きとなってしまった。 淳平は何のために来たんだろうか、わからなくなっちゃったな……。 前へ 次へ
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熱き心魂──あるいは二日目その一 さて、“鳳凰カップ”という祭りもいよいよ折り返しを過ぎ二日目。 今日も昨日同様……いや、それ以上に私・槇野晶と“妹”のアルマは 出典ブースの準備に余念がない。何せクララ……もとい梓とロッテの “大番狂わせ”は、良かれ悪しかれ多少の注目を集めてしまう物だ。 MMSショップ“ALChemist”のホームページにも、問い合わせが幾つか 寄せられていた。恐らくブースへの来客数も微増するだろう、有無。 「というわけでだアルマや、今日は朝からかっ飛ばして良いぞ?」 「え、ええっ!いいんですか!?……レパートリー無くなりそう」 「一向に構わん。全力全開、魂の限りを込めて唱い上げるのだ!」 「……はいっ、精一杯……唱える限り、あたし……唱いますね?」 本当は誰かに手伝ってもらいたかったが、梓とロッテは決勝ブロックの 説明を受けねばならぬ故、武装一式を持って入場時に別れたっきりだ。 こういう時に手を貸してくれる係累はいないし、“オーナー”とて原則 店の経営自体には不干渉だ。今後も決して、表に出る事は無いだろう。 アルマは客引き……を兼ね“己”を表現する為、ブース内のステージで 唱うのが仕事だ。なので、今日も私一人で此処を切り盛りする訳だな。 『只今よりゲート開門いたします!皆様、二日目も頑張ってね~っ!』 「……にしても昨日もそうだが、妙にノリノリだなこのウグイス嬢め」 「なんというか、マイスターみたいな印象受けますよね……あ、いえ」 「ちょっと待てアルマ、私はあんな可愛げ満載の雰囲気ではないッ!」 「そんな事はないんじゃないかな、小さなレディ達?十分、可憐だよ」 思わず噴きそうになりつつも、慌ててアルマから手を離し正面を見る。 そこにいたのは既に幾人か並んでいる客達だった。その先頭にいたのは 以前クララの初戦を務めた“アラクネー”のオーナー、前田氏だった。 ……この様な歯の浮く台詞が言えるのは、彼だけだ。間違えはしない。 無論、アラクネー嬢も一緒だ。とは言っても、彼女はスーツ姿だがな? 「げふげふ……貴様ら、アラクネーにウチの服など入り用なのか?」 「服その物は某の趣味ではないが、ネクタイだけなら良さそうでな」 「えっと……そう言えば、そうですね。ネクタイなら、合うかも?」 「アルマ君、だっけ……君は、ライブの準備をしなくていいのかい」 「あっ!?す、すみません今すぐにしますからっ!あうう……ッ!」 前田氏に急かされて、アルマが楽屋の用途を為すコンテナに飛び込んだ。 その合間に私は、アラクネー嬢のスーツに合うネクタイを見繕ってやる。 そして彼らを捌ききり、次の者を応対する頃……それは唐突に始まった。 ハンディ・シーケンサーによるパーカッションの音色に続き、弾ける弦。 それは地中海の潮風を思わせる軽快なリズム、それでいて勇壮な音色だ。 『♪ビルの林-おか-に小さな躯晒して、水面に映した想い出-かげ- 汐の様に遠ざかる日々……それでもあたし、振り返らず進むの 暮らした昔大事にしたい!でもねもっと、今を輝かせたいッ! 星無き遙かな黒天-よぞら-に、茜-あさひ-の色を宿したいの! 現在-今-が果てに過ぎてもあたしの想い、決して消させないよ そうよ──────忘れないの、この傷-むね-の痛みはッ!!』 題名は“朱金-あかね-の夜明け”。ラブソングなのか戦いの挽歌なのか 良く分からぬのだが、作詞作曲等全ての作業をアルマが行ったらしい。 アルマに言わせると『あの人の声には、届かなくてもいいんですよ』。 つまりは自らの言葉で、声で……そして想いで、曲を作りたいらしい。 こういった行為は、まさに神姫の“創造性”の極北とも言えるだろう。 テンポの速い曲故か、あっという間に……4分足らずで独唱は終わる。 「う……うおおぉぉー!?唱ってる、神姫が唱ってるぞぉーッ!?」 「戯けッ!怪物でも見る様な声を出して、それ程驚く事か貴様ッ!」 「いやだって……この娘“アルマ”だっけ、ストラーフでしょ?!」 「有無。だが戦いだけが神姫の姿ではないのだぞ、この服の様にな」 喚く男性客……恐らくは高校生か?……を一喝しつつ、私は思い出す。 現在の様にMMSが神姫として……更には“武装神姫”として、規格の 統一が為される前の試作期に何タイプか存在した、“神姫”達の名を。 故あって、私は神姫の黎明期……試作段階の逸話を色々と知っている。 その頃は音感能力特化型等、実に様々な能力を持つ神姫が試作された。 中でもとあるタイプに属する一人の神姫は、“訃報”が報じられた程に 一過性ながらも人々の話題となった、言語処理系特化型の神姫である。 そうか、もう大分経つか……“武装神姫”以外を知らぬ者も多い筈だ。 『えっと……皆さんッ、今日も“鳳凰カップ”に来てくださって……』 『Woooooooooooooooooooooooooooo!!!!』 『……あ、ありがとうございますっ!このお祭りに花を添えたくて!』 そんな感慨も、アルマの声に惹かれて訪れた客達への応対と、それ以上に アルマの前に群がってきた“観衆”の熱い叫びに、早々と掻き消される。 ……にしても、何十人いるのだ?今日は“鳳凰カップ”の決勝戦である。 そちら目当ての方が必ず多い筈で、しかもこのブースは“祭典”で用いる 簡易型テーブル3~4台分の幅しかない。それなのに、この盛況振りだ。 『恥ずかしかったけど……今日は一日唱い続ける事にしましたッ!!』 「凄い人手ですね、決して大きくないブースなのに買い物客も聴衆も」 「む?貴様ら……戸田静香とココか。暇潰しに来た……いや、違うか」 「まさか。私も個人ブランドをやっているんです、気は抜けませんよ」 客の列に紛れてやってきた戸田静香と、会話をする。そう言えば彼女も “TODA-Design”という銘で、エルゴ等に神姫用衣装を提供していた。 不敵に笑う彼女らしい動機とも思えた……のだが、真実は違う様だな。 そして私達を後目に、アルマの挨拶で“観衆”は一気に燃え上がった! ……この場合“萌え上がった”でも間違っていない気がするな、有無。 「静香が“ライバル”の偵察をしたい、って建前で……もごもご!?」 「あくまでこれは偵察なの。そうでしょココ?ごめんなさい、晶さん」 「まあどちらでも私達は構わぬ。存分に見て、聴いてゆくが良いぞ!」 『拙いあたしの唄ですけど、少し疲れたら聴いていって下さいねッ!』 『アルマちゃーんッ!!いーじゃん、いーじゃんすげーじゃんッ!?』 『次は“妹”を題材にした……“天空-あおいそら-の鳥”ですッ!!』 『Woooooooooooooooooooooooooooo!!!!』 ──────不死鳥の様な心は、皆も生き返らせるんだよね。 メインメニューへ戻る
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ビックリした。 途中から、シオンになんでか知らないけど、通信を切られてしまった。 驚いたのはそれも理由の一つだ。 だけど僕が一番に驚いたのは、 ――シオンが勝てたことだ。 あのムルメルティア型になにか言われてたかと思ったら、突然、あの丁寧な物腰の神姫シオンが今まで見たことないくらいに大激怒した。 怒った後はまるで別な神姫に変わったように、練習でしか使えてなく本番のバトルでは一切使えていなかった武装を巧みに使い、勝利を掴み取った。 僕が興奮冷めやらぬ状態なのに対して、アクセスポッドからはオドオドとしているシオンが出てきた。 「すいません、螢斗さん。命令を無視して通信を切――」 「やったじゃないか、シオン! ハハハ!!」 「え、ちょっと螢斗さん? ……きゃっ!」 シオンの脇部分に手をやって軽く持ち上げている。でも、僕の頭より高い位置に。 まあ、俗にいう子どもにやるたかいたかい状態だ。 シオンが勝ち星を挙げたことで、また僕のテンションがおかしい。 けど気にしない! 「きゃーー、螢斗さん~!?…………うふふ、あはは~」 シオンもなんだかこれが楽しくなってきてきて、笑いが込み上げてきたみたいだ。 「アハハ!!」 「やったぜ!! 螢斗!」 「シオン、やったわね!」 そして、淳平とミスズも喜んでいる。 うん、バトルも勝てて万々歳、良かった、良かった。 「――ったく、負けちまったか。せっかく替え玉が手に入ると思ったんだがな~」 チンピラさんがいつの間にか近くに寄って来ていた。 ため息を吐いて残念そうにそう言う。 狂喜乱舞していた姿を見られていて僕もシオンも、急に恥ずかしくなってしまった。 「さぁ、負けたのだから、さっさと出て行くのだよ」 君島さんが僕の前に出て来て偉そうに言っている。 あなたは何もやっていないでしょ? 勝手に喧嘩吹っ掛けただけですよね。 「はいはい、わかったからよ。そう急かすな……行こうぜ、『コハク』」 気付かなかったけど、ムルメルティア型の神姫は「コハク」というらしい。 彼のことをチンピラさんとか不良とか思っていたけど、彼もやっぱり武装神姫が好きなだけの人なのかも知れない。神姫の名前を呼ぶ時は優しそうに見える。 ……僕にとっては怖いままだけど。 「貴君よ。さっきはすまなかった、訂正する。……良い上官だな」 彼の肩に乗っている神姫がシオンに頭を下げてなぜか謝った。 なにを言われたら、あんなにシオンは怒るのだろうか。砂風が舞っていて、よく聞き取れなかったのが残念だ。 ワザと怒らす気はないのだけど、なんだか気になった。 「もう気にしてません。……考えてみたら、あなたは本心からそう言ってるとは思えませんでした。戦ってみて気付きました。……なんで螢斗さんの悪口を言ったのかはわかりませんでしたけど」 どうやら、あのコハクという神姫はバトル中僕に対して酷いことを言っていたみたいだ。僕はそんなことで一々怒らないけど、シオンはそれがスイッチになってしまったらしい。 さっきの君島さんとの会話でも思ったけど、僕は神姫マスターとして愛されているみたいだな、うん。 「……ふ、それではな。――タケル上官、もういいぞ」 「……っけ……朝から来るんじゃなかったぜ。あ~あ」 神姫はそれを聞くと顔に笑みを浮かべた。 彼の方はイラついた様子のまま、そう言うとゲームセンターから出て行った。 「ふむ。これで結果オーライになったではないか。私の目論みどおりだ」 「かなり僕が危ない所まで逝きかけたんですけど!? 初めにこういう事をするときは本人の承諾を取ってください! 絶対認めませんけど」 「スパルタだと言っただろう?」 「う、……はあ」 勝てることを君島さんは予期して、僕の立ち位置を危うくさせたという事か。 シオンが恐怖よりも強い感情で塗り固め、勝利できると。だからバトルの前に好きとか愛してるとか聞いたのか。 可能性の問題だと思うのだけど。 シオンがそんなにキレなかったかもしれないし、第一に不良の彼が朝にいたのも偶然だし、その友達が裏の仕事で人手を探していたのだって……。 ……うーん、わからない。 僕がそうやって考え込んでいると、隣にいた君島さんはおもむろに自分の携帯を気にし始めた。 どうやら、着信が掛かってきたみたいだ。 君島さんは携帯を耳に寄せ話し始めた。 「……あー……うむ……そうか、すぐに来いと?……ふむ、わかった……」 「どうやら内容から察するに、主殿は急用ができたみたいでござります。この後は、シオン殿の祝勝会でも、なんでもするといいと主殿はそう思ってござります」 「あ、リンレイ! 今までどこにいたの!?」 ミスズはまたまたその場に現れたリンレイにそう聞くが、それは無視された。 携帯に早口で話している君島さんは「すまない」と手でジェスチャーすると、サングラスを再び掛けてゲームセンターを早足で出て行ってしまった。 「あ、ちょっと!? もう!」 「あの神姫は生粋の“忍者”なんだから気にすんな。あれが普通なんだよ」 「神姫にとってあれは普通の芸当ではないですよ。……ウウ……必ずや私が突き止めて見せますぅ」 なんとしても納得がいかないミスズは半泣きになりながらも、リンレイを完全究明する決意をしたみたいだった。 「私は勝てたんですよね?」 胸ポケットに戻ったシオンが僕に聞く。まだ実感が湧いてないみたいだけど、 「うん、そうだね。……偉かったよ」 よしよしと頭を撫でる。まだこの先も、勝てていけるという保証はないけどこの喜びは噛み締めておこう。 「そうですよね……えへへ」 ■■■■ 「はー、スッゲー疲れた。こんなの二度とやらねぇー」 「そう言わない。自分はなかなか楽しかったよ」 ゲームセンターから出て来た彼は、裏通りに入ると格好を直しサングラスや首を重くしていた、いくつものネックレスを外し始めた。 それらをポケットに仕舞いこみ、首に手をやりさすっている。 彼の隠れていた目元は鋭く、サングラスをしていなくとも威圧感はあり、着崩してなくとも不良かと思われるほどのガラの悪さ。 身体の均整がとれていて、服の上からでも筋肉もほどよくついているのがわかる。 容姿“は”整っている。 だが、目元がマイナスになり、周りからは恐れられそうな風貌ではある。 「……っけ……あのやろう言いたい放題言いやがって」 「まあまあ」 頭の上に移動していた神姫が彼をなだめていた。 「そういや、かなりボコられてたんだが平気か?」 目線を上にやり、自分の神姫を不器用そうに心配している。表情は変わっていない。眼つきは鋭いままだ。 それでも、声だけは聞くと優しそうではある。 「心配ない、バーチャルだから。ものすごい痛みがある程度だし」 「腹ブチ抜かれてたんだから、それでも十分だっつうの。あんなになるまで“演技”しなくとも、よかっただろうが」 「もちろん、口調とかそこらの上官たちへの罵詈雑言は役としてのセリフだけど、バトル自体はあまり演技じゃなかったよ。言われた通り本気は出していないけど、結構力は入れていたんだ」 「ふーん。コハクが言うならそうなんだろうな。バトル恐怖症みたいだった、つう話はどこにいったんだか」 「戦えなかっただけで元から強くはあった。けど、CSCから来る怒りがパワーを底上げしたとかかな? 王道展開よろしくそういう展開にさせてみたら、予想外に強くなったみたい。まあ、アーティル型だし当然かな……よっこいしょっ」 ムルメルティア型の武装神姫「コハク」はバトルで起きたことをそう説明した。 コハクは軍帽とサングラスを外してから、彼の頭の上で腕を枕にして寝そべり始めた。 神姫一体が頭に乗っていたらネックレスよりも首に負担がかかると思うが、それが普段の彼たちの姿だ。 「せっかくの休みの日だっつうのになー」 そう愚痴ってから彼は歩き始めた。 その時、 ――ドスン。 「……おい」 突然彼の後ろから誰かが軽く抱きついてきた。 だが、彼も誰が抱きついてきたのかはわかっているのか、あまり驚いていない素振りをする。 もしも抱きつかれた衝撃で、彼が前のめりに動いていたら、頭の上にいるコハクは落ちてしまうからだ。 彼の踏ん張りが功を奏して、コハクはそのまま寝ころがっているままになった。 「すまなかった。……辛い役目を背負わせてしまったみたいだ」 抱きついてきたのは女性だった。背の高い彼と同じか少し低いくらいの背丈。 彼女は彼の後肩部に額を乗せて身体を密着させている。抱きついているから当然だ。それは彼が信頼できる相手だから出来る行為。 それに加え彼女はすまなそうに謝った。 「……っけ……あんなのは慣れてんだよ。心配すんな」 「うん? 心配はしていないぞ」 「ッ……だったら謝ってくんなっつうの!」 彼は腰から回されていた腕を振りほどき、抱きつかれた状態を解いた。 若干顔は赤くもある。抱きつかれて少し恥ずかしかったみたいだ。 彼は彼女の前へ身体を向き直させ対顔した。 「そう怒るな。あと顔が赤いぞ」 「っく、うっせぇ!」 「はっはっは、照れるな、照れるな」 黒のジャケットを着ていて長い黒髪を腰まで流している女性。 そこには君島 縁がいた。 「……いいのかよ、あいつらといなくて?」 「電話が来たフリをして出てきたのだよ」 「ふーん、なんで?」 「猛と話がしたくなってな。心配はしてはいなかったが、怒ってやいないかとな」 「だから、気にしてねぇっつった――」 「タケル上官、それは嘘でしょ。『言いたい放題いいやがって』と愚痴っていたのはどこの誰だったかな?」 “猛”と呼ばれている彼の頭上からコハクは笑いを含ませながらそう言った。 「ふむ。コハクもすまなかったな」 「いえいえ、自分はタケル上官の命令だから気にしてないよ」 「そうか……猛もすまんな」 再度謝ってくる君島。 猛はいつも尊大な態度をとっている君島がこのように素直に謝ってくるのに若干戸惑った。 だが、それはなんとか顔には出さないようにしている。 紛らわすために別の話題、戦ったあの少年と神姫について話し出す。 「バトル恐怖症の神姫を持つオーナーをマジでビビらせろとか。合図したらアドリブで神姫を怒らせて戦えとか、色々と俺たちを振り回しやがって。……ったく、縁はあのチビとかに随分肩入れしてんだな」 「うむ。かわいい後輩なのでな」 「そうでござりますな。長倉殿はご婦人に好かれそうな風貌でござりますし」 君島の肩にはいつも通りにリンレイが立っていた。 君島とは顔見知り、いやそれ以上の関係の猛にとっては、いなかったのにいつの間にかいるリンレイの瞬間出現には慣れているので、特に動じていない。 「…………っち」 それを聞くと胸の内からイラつきが登って来て、無意識に舌打ちをする猛。 「おや、私があの少年に世話を焼いてたら、そっちが妬き上がってしまったのかね? ニヤニヤ……」 彼の態度が変わったのを見てニヤつき始める君島。そして傍にいる神姫たちも便乗して猛に対してニヤつき始める。 「子どもでござりますな。フフ」 「タケル上官はそういうのすぐ顔に出るから。……ふふふ」 「ふん、言ってろ」 また顔に熱が上って来て顔に現れ始めたのに気付いた猛は、それを見られるのが恥ずかしかったので、ポケットに戻していたサングラスを掛けた。 「このサングラスとネックレスとかも、あれに必要だったのかよ?」 サングラスに手をやって顔を背けたまま聞く。 「うむ。変装なども大事なのだよ。観衆が多い中では猛の顔見知りがいないとは限らないのでな。日常生活で支障がでないようにとの配慮だ」 「……っけ、無駄な配慮だこと。俺のツラ知ってる誰かがこんな朝早くにいるとは思えねぇけどな。……俺たちがそんなにこの茶番に必要だったのかね」 「いや、猛たちがいなくとも9通りのやり方を考えてあったが」 「おいコラ!」 不満そうな声を張り上げる猛。 それを見た君島は、 「またそうやって怒鳴るな。ほれ……」 ギュッと。 近づくと今度は前から猛を抱きしめる。 君島は背中に細い腕を回して、穏やかに言う。 「私が猛に会いたかっただけ……と言ったら、どうする?」 「……こんな面倒なことしなくとも、普通に呼んだら来るっつうの。……ったくよ、縁はよくそうやって人をおちょくるよな……」 そう言って猛も君島の腰元にも手をやる。 ストレートな髪の毛を指で梳かしつつ、恥ずかしがらず今度は抱きしめ返す。 「美人なネーちゃんと言ってくれて嬉しかったぞ」 「ありゃ、演技の一環だ」 「そうか。……ふふ」 「笑ってんじゃねぇよ」 「ふ……オシャレしてきた甲斐があったというものだよ」 「いや、キメてこなくても……縁はいつも………そのよ……なんだ……」 「なんだね?」 「///~~。なんでもねぇ!」 顔はサングラスくらいでは赤さが隠しきれなくなっていた。 それからは黙ってしまう猛。 「やれやれ、真正のツンデレめ」 「は? ツンデレ? ……なんだそりゃ」 聞きなれない単語におもわずつぐんでいた口を開いて聞いてしまう。 「ふむ。今を生きているのにツンデレを知らんのか。いいか、ツンデレと言うのはだね、数十年前から続く世の中の人々に息づくものであって猛みたいにツンツンとデレデレが――」 朝から昼に変わろうという時刻。 誰も通らないような裏路地で、抱き合ったまま『ツンデレ』とは何かを説明している、聞いている構図がこの場には展開されていた。 「フフ、仲睦まじいでござりますな」 「ホントにねぇ」 それを生暖かい目で見る神姫たち。 自分たちの神姫が傍にいるのにもかかわらず、そういうのは気にしない二人だった。 彼と彼女は恋人同士なのだから。 前へ 次へ
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真っ直ぐに学び、ひたむきに語り 秋葉原を要する千代田区には、“一応塾”なる大学出資の学習塾がある。 どことなく安心出来ない屋号であるのだが……実績は確かと聞いていた。 私は戸籍謄本等を求められぬこの塾へ、実験的にクララを通わせている。 勿論“殻の躯”で門前払いされたので、HVIFを用いて審査を通った。 そこで彼女は高校生・槇野梓として、一般の“同年代の人間”と過ごす。 「ただいまなんだよ、お姉ちゃん。今日も宿題が一杯あるんだよッ」 「おお、御苦労だな梓……いや、クララ。HVIFを休ませるか?」 「ううん。今日は筆記問題もあるから、この姿でないといけないよ」 「この時代にプリントとはなぁ。電子データに統一すればいい物を」 そうなのだ。“当番制”を崩せない以上、毎日塾に通う事は出来ない。 とは言え進学塾故に、ノルマというか必要な単位はこなさねばならん。 従ってクララは当番日になると、法外な“宿題”を抱え込む事になる。 更に塾通いは深夜まで続く。だが聡明な梓は、決して夜遊びに奔らん。 「“書く能力”を維持するには、スタイラスだけじゃ不十分だもん」 「それもそうだが、環境問題を叫ぶならば工夫が必要にならんか?」 「その為に、来年度はフィルム型のスクリーンが支給されるんだよ」 「……レンタルか。もう少し早くても良さそうな気はしていたがな」 この現状を仕向けたのは私で、同意したのは他ならぬクララ本人なのだ。 寡黙で頭脳派に見えるクララだが、ハウリンタイプのサガと言うべきか、 実は外に出て目一杯“勉強”したかったらしい。それも人間の学問をだ。 だが今現在まで、日本国は神姫に人権を認めていない。海外も殆ど同様。 となればどうしても、学習の機会は通信教育が頼り……嘆かわしい事だ。 「そう言えば、今日は神姫を連れたクラスメイトが来ていたんだよ?」 「……確かにあの塾、神姫を持ち込む事自体に渋い顔はしなかったが」 「種型の“綺羅”さん。彼女もオーナーの勉強に興味有るみたいだよ」 ……名前に少々引っかかる物があるが、それはさておこう。有無。 梓の話ではないが、人間の行動に興味を持つ神姫は結構多いのだ。 だが大抵の場合、社会進出は認められぬ。ネット上で正体を隠して 活動している神姫がいないとは言い切れないが、殆どは玩具扱い。 『なら“肉の躯”はどうなるの?』……これが私の考えた疑問だ。 「どうだ、仮初めとは言え高校生としての勉学の日々は?……辛いか?」 「そんな事無いよ、お姉ちゃん。自分の能力を活かし、高められるから」 「流石はクララ。私の見立て通りだ……む、もう筆記は終わったのかッ」 そしてエルゴを訪れた際に、クララの言葉で思いついたのが“塾通い”。 “HVIFによる神姫の社会進出”実験……という名目で、行っている。 この企みにクララのニーズは見事当てはまり、周囲の誤魔化しも良好だ。 御陰で人間の社会常識を教え込む際に、ロッテよりも容易に会話が進む。 「終わったよ。後は全部データ処理……神姫素体で十分出来るもん」 「そうか。しかしこんな問題、私でも時間が掛かるというのになぁ」 「学ぶ事はとっても楽しいんだよ、お姉ちゃんが技術を磨く様にね」 「成程な……向上心は大事だ。今後もその調子で学ぶのだぞ、梓ッ」 神姫にもある“発展性”が、クララに於いては知識という方向性で 急速に成長している。これは良い傾向と言えた。己の才能を活かし 更に高めていく。人間としてそれを活かせずとも、可能性は増す。 そうして、人は更なるステージに到達していくのだからな。有無。 「……え、ええっと。梓ちゃん?これ、なんて書いてあるんですか?」 「なんだか難しすぎて、コアがオーバーヒートしちゃいそうですの~」 「アルマお姉ちゃん、ロッテお姉ちゃん……無理するとよくないよ?」 テーブルを登ってきたアルマとロッテが、その難解極まりない宿題に 音を上げている。神姫が学問を学ぶ機会などそう多くはない。大抵は こんな反応だろう……。故に、クララの特異性が目立つとも言える。 「今ハーブティーを入れてやる。皆飲んで、寝る準備をしろよ?」 ちなみに、これは物理学のプリントだった。成程、クララには重要。 学んだ事は“魔術”に転用する事で、具体的な力となる。これもまた 人間では為しえない……“武装神姫”だからこそ出来る事であるな。 「有り難うなんだよ、お姉ちゃん。躯があったまるもん」 「はふ……流石にHVIF用のサイズは、違いますの♪」 「人間とほぼ同様なのだ、アルマでもなければ飲めまい」 「うう、ひどいですマイスター!?……飲めますけどっ」 さて……ティータイムでくつろいだ所で、私は梓に質問する。 純粋に一人の“姉”として、最も気になる要素とすら言えた。 それは即ち、人間であれば十二分に有り得るだろう“話題”。 「ところで梓や、塾でお前に親しくする男性はいるのか?」 「結構いるんだよ?神姫だって言えないから苦労するもん」 「……ほう。例えばどんな奴だ?ヘラヘラ笑ってないか?」 「顔がデロって垂れ下がった人が、話しかけてくるんだよ」 ……今度そいつを連れてきてもらう必要がありそうだと思うな。 無論、私の“妹”である梓……いや、クララに変な蟲が付いては たまらん故、一度お灸を据える為だ。そこの貴様も、同様だぞ? この後を覗いたら、たっぷり仕置きしてやる。覚悟しておけッ! 「……さて、そろそろお風呂に入るか。寝る準備を始めるぞッ」 「うん。今日は疲れたから、たっぷり入ろうね……お姉ちゃん」 「う゛、うむ。背中を、その。流してやろうではないか、なぁ」 「マイスター顔がまっかっかですの♪……アルマお姉ちゃん?」 「あ、あのっ。あたしも、ロッテちゃんの背中……流したいな」 「ふぇ、ふぇえっ!?そんな事言われるの初めてですのッ!?」 ──────姿形が違うからこそ、毎日が楽しいのかな? 次に進む/メインメニューへ戻る
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戦うことを忘れた武装神姫 その20 ・・・その19の続き・・・ フィーナの次のオーナーは・・・なんとティナのオーナーの、かえで。 CTaにティナのメンテナンスを頼んだ際に、フィーナの話を聞いたかえでは、 その場でフィーナを迎え入れたいと申し出たとか。 もっとも、この流れは CTaの計らいも少なからずあったようだが、リーダーの希望もあったらしい。 そして、リーダーは本名の「フィーナ」として、かえでの元で新たな生活を 始めていた。 「あーっ! リーダー! 元気してた?」 かえでの肩の上の「リーダー」に、リゼは久遠のポケットから顔を出し手を 振って応える。 「もう、リーダーじゃないですっ。 フィーナと呼びなさい!」 と、叱るフィーナの顔は、大変に穏やかな・・・笑顔だった。 その様子に、雑誌社の一人が気づき、カメラマンを含めた数人がやってきた。 色の濃い度付きスポーツグラスをしていた久遠だったが、あっさりとバレて しまった模様。 「・・・久遠さんですよね?すみませんがバイクを降りずに、そのスタイル の写真を撮らせていただけませんか。 それと、神姫の皆様はどちらにいま すか?」 久遠はちょっと苦笑いを浮かべるも、 「ウチの連中なら・・・ほら、ここに。」 とポケットを開くと、お揃いのゴーグルを着けたエルガ、シンメイ、イオ、 そしてリゼを、ハンドルやバーパッド部分に座らせた。 彼は、神姫たちに プレス連中の希望する希望するポーズを取らせる。もちろん、彼自身も。 「どうもありがとうございます、良い絵が撮れました!」 深々と頭を下げるプレス陣。 「今回の特集ページの表紙に、是非使わせて下さい!!」 「いや・・・そんな急に言われても・・・」 困惑する久遠に、フィーナが言った。 「良いのではないですか? 久遠さんは、今回の大会の主役でもあるのです から。 もっと堂々として下さい。」 「そ、そうなのか?」 「フィーナぁ、それはにゃーさんにはできないよー。 どうがんばっても、 いっつもでれんちょだもん。」 と、間髪入れずにエルガが言う。頷くシンメイ、リゼ、イオ。 その様子に かえでたちも、プレスも笑う。 場の雰囲気がさらに和む。。。 久遠とサイトウの対戦以降、久遠の言うところの「バトルの質」が向上した という。 神姫を持つ者に、神姫のバトルとは一体何なのか?・・・という 問いかけをした対戦にもなったようだ。 もちろん、M町のセンターも大きく雰囲気が変わった。 警察沙汰にもなったあの一件で、店長は相当立場が危なくなったようだが、 久遠の働きかけもあり、なんとか公認の看板は守り通した。 神姫に詳しく ないアルバイトはいなくなり、代わって学生時代から入り浸っていたような 良い意味で「濃い」連中が正社員や契約社員の形で入り、店内も大幅に改装 された。 また上の階に東杜田技研・HT-NEKの直営店が入店し、いつでも 気軽に立ち寄って相談できる場所となり、より一層人気のセンターとなって いった。。。 「なんだ、このポスターは。。。」 センターに入ろうとした久遠、ドアに張り出されたポスターに目が止まった。 あの時の「とつげきしゃもじ」エルガと「工臨壱式」シンメイが火花を散ら している、何とも不思議なスタイル。 真ん中に書かれた文字は- 、 <第1回 カッコイイ神姫選手権> 「うはっ、本当にこのタイトル使うとは思わなかったぞ。」 苦笑いする久遠を、店長が出迎えた。 「どうも、お待ちしていました。 皆さんお待ちかねですよ。」 ・・・この日、M町のセンターで開催されるイベント、それが「カッコイイ 神姫選手権」。 リゼが叫んだ、「カッコイイ神姫」は、一部の連中の間で かなりの流行になり、それならば、とM町の店長が久遠とCTaに働きかけ、 東杜田技研に協力を得て、さらには各メディアをも巻き込み、挙げ句は公式 のお墨付きまで付いた一大イベントに仕立ててしまったのだ。 「店長・・・やるときゃやるんですね。。。」 一歩踏み入れるや否や、久遠は想像を超えた店内の盛り上がりに、半ば呆れ つつも店長の行動力に驚きを隠せなかった。 「まぁね。 それなりのネットワークは持っているつもりだから。」 店長はそう言いながら、久遠にタイムテーブルの確認表を手渡した。内容を 確認する久遠の目が、オープニング部分でいきなり固まった。 カッコイイ神姫とはどんな神姫か? 戦い続ける神姫でも、 戦いを忘れた神姫でも、 仕事に就いている神姫でも、 誰もがカッコイイ神姫になれる。 集え、我こそはと思うカッコイイ神姫たち。 今ここで、神姫の新しい歴史の1ページを造ろう-。 「ちょ、ちょっと店長、これ俺が言うんですか?」 「そうだけど。」 目が点になる久遠に、事も無げに流す店長。 「誰がこんなこっぱずかしい台詞考えたんだっ!」 「あたしだよ。」 聞き飽きるほど聞き慣れた声と共に、久遠の後頭部をどつく人物。メイド姿 のDr.CTaが、久遠の背後に立っていた。 「二晩かかったんだぞ、このオープニングを考えるのに。」 「・・・。 勘弁してくれ、俺はそういうキャラクターじゃないっつーの。 それこそ、お前が言えや。」 「やだよ、こんな台詞。恥ずかしいもん。」 「・・・ハァ・・・。」 肩をガックリ落とし、ため息の久遠に、リゼが耳元にのぼって言った。 「なぁ、ヌシさん。どうせあたしらが初っ端でデモンストレーションをする だろ? それと絡めて、あたしたちが言ってやるよ。」 「そうか? じゃ、お願いしちゃおうかな〜。」 と言う久遠に、イオが顔を出して続けた。 「そのかわり、終わったら上で何か買って下さいね、全員に。」 なんか謀られた気がすると思いつつも、自分で言うよりはマシと考え直し、 さくさくと準備に取り掛かった。 この選手権はバトル型式ではない。 各オーナー、神姫が「カッコイイ」と 思うパフォーマンスを設けられた制限時間内で行い、審査してランキングを するだけ。 審査員にはそうそうたるメンバーが並ぶ。 エルゴの店長や、 東杜田技研の社長、本名を明かさないと言う契約で神姫開発者も一人招いた とも。 そして、審査委員長に・・・なんと久遠。彼の神姫たちも、4人で 一人の扱いではあるが審査員に名を連ねていた。もちろん。CTaも審査員に なっている。。。 エントリー期間はわずか数日間だったにもかかわらず、相当数の応募があり、 事前審査を行うほどであった。事前審査を経て厳選された十数組が、普段は バトルで使われるフィールドを舞台として用い、歌に踊りに模擬戦に、果て はマスターをも絡めたお笑いまで、何でもアリの展開がなされるであろう。 カッコイイに、形はないのだから・・・。 やがて、選手権の開会時刻に。 司会・進行は、店長の神姫、白子のアスタ と兎子のコリン。 2人とも、見事なまでの司会者スタイル。審査員に続い て選手が入場し、ギャラリーが拍手で迎える。 生活感あふれるスタイル、オーナーの持つみかんの段ボール箱に入って入場 する神姫あり。オーナーが操縦するラジコンヘリに乗り、BGMまで用意して 派手に入場する神姫あり。オーナーと同じ姿、すなわちお揃いのコスプレを した神姫も。。。 その中に、かえでの姿があった。 おもしろ半分で応募したところ、見事に 選出されてしまい、選手として参加することになってしまったのだ。 当初 は乗り気でなかったフィーナだったが、かえでの熱意に負けてティナと共に 出ることにした。 PDA状態のティナと、戦闘のプロのフィーナが、高校生 オーナーのかえでと、どんなかっこよさを見せてくれるのか- 。 「それでは・・・名誉カッコイイ神姫の入場ですっ!!」 コリンの声で、最後に久遠たちが入場する。 彼は神姫たちにいちばん好評だったオフ車乗りのスタイルのまま登場。 神姫たちも、それぞれにカッコイイと思うスタイルで、久遠の肩や手に乗り、 堂々と入場。 エルガは、新調した特製バトル用ホワイトエプロンにおたま。 シンメイは、工臨壱式スタイルで、6mmレンチを背中に付けて。 イオは、あの時と同じ装備をより一層軽快にしたモードでフワフワと。 リゼは・・・マイクスタンドをくくりつけたサブパワーユニットを手に。 ギャラリーから、より一層大きな拍手がわき起こる。 フィールドに歩み寄る久遠。 そこには、ちいさな舞台がスポットライトで 照らし出されている。 彼は神姫たちをフィールドに乗せた。舞台上に上が る4人。 それぞれの考える「カッコイイ」姿をそれぞれのパフォーマンス で魅せる、このイベントの目玉の一つが始まろうとしていた。 舞台の真ん中に立ったリゼは、くくりつけたマイクを外し、オリジナル曲を アカペラで歌った。 美声に静まり返る店内。 歌い上げたリゼはパワーユニットを背負うと、3人に目で合図を送る。 エルガ、シンメイ、イオ、そしてリゼの4人は、それぞれにスタイルを決め、 あの台詞が静まり返った店内に響き渡った。 「カッコイイ神姫とは、どんな神姫か?」 変わらぬ毎日の中でも、自らを常に磨き続ける神姫がいる。 何気ない日常の中で、「カッコイイ」を目指す神姫がいる。 武装神姫であるために、目指すものがあり、忘れないものがある。 そう、ここにいるのは、戦いを忘れず、戦うことを忘れた武装神姫。。。 ・・・ 第2部「What s Battle style? -It s my Life style.」 了 ・・・ <その19 へ戻る< <<トップ へ戻る<<
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